米国財務省は、イラン産原油の生産・販売・引き渡しを60日間認める原油ライセンスを発行した。新たな石油供給と地政学リスクの後退を市場が織り込む中、原油価格は下落した。ワシントンが2018年に制裁を再導入して以来、イラン原油が主流の需要家に再び流通するのは初めて。
この動きで、ホルムズ海峡を巡る戦闘が4か月で終息し、原油価格の急騰に歯止めがかかった。市場にとって最大の焦点は、エネルギー価格低下がインフレと世界経済にどう影響するかという点。
財務省のライセンスは、8月21日までの原油・石油化学製品および石油販売を認めた。3月の前回のライセンスは航行中の貨物のみが対象であり、今回の措置は近年で最も大規模な解禁となる。
市場の反応は早かった。ブレント原油は3%以上下落し、1バレル約77ドルとなり、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)も74ドル近辺まで落ち込んだ。今回の動きは、1か月にわたる下落局面が続いていることを示す。
再解禁される供給量は現実的な規模。4月の米海軍封鎖前、イランは日量150万バレル超を輸出していたが、5月にはおよそ26万バレルまで減少した。大半は中国の製油所向けであり、封鎖解除で再び供給される見通し。
輸出の回復は段階的に進む見込み。海運、保険、買い手の信頼回復には時間を要する。それでも、第1四半期にブレントが118ドルまで急騰した供給不安は、今回でやや緩和される。
原油安はエネルギー輸入国にとって減税と同じ効果をもたらす。ホルムズ海峡は世界の原油の5分の1が通過し、その大半がアジア向け。
中国、インド、日本、韓国などが燃料コストを抑え、家計や企業の負担が軽減される。
ガソリンや暖房価格が低下すれば消費支出を迅速に後押しする。新興国輸入国もエネルギー費用や通貨面で余裕が生まれる。
一方で、輸出国は逆の立場となる。湾岸諸国やロシアは1バレルあたり収入が減少し、イランは主要な歳入源を取り戻す。OPECプラスは価格維持のため減産を検討する可能性もある。
最も明確な影響経路はインフレ。米国の物価は5月に4.2%上昇し、過去3年で最高。エネルギーは23.5%上昇。米連邦準備理事会(FRB)は6月17日に3.50%~3.75%で政策金利を据え置いた。
FRBの新たな見通しは、今年利上げの可能性を示唆。
こうした中、原油ライセンスは極めて重要。エネルギーが物価上昇の主因であり、原油安は5月のインフレ急伸を最速で緩和する策。
市場では今後、利下げの確率やインフレ期待が緩和方向へ動くかが注目される。
株式市場は緊張緩和をリスクオン材料と受け止めた。米国株は6月を通じて過去最高値を更新。S&P500は一時7500を超え、ダウは5万1000台に到達した。
一方で、主力業種は交代。原油安で石油大手などエネルギー株が出遅れる展開となった。
航空、海運、消費関連銘柄は燃料安の恩恵を受けた。
景気循環株とダウ平均が主導し、金利に敏感なハイテク株は米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派姿勢で不安定な動きとなった。
ビットコインとリスク資産への影響
暗号資産は正念場を迎えている。ビットコイン(BTC)価格は月曜日にJDヴァンス氏やストラテジーのブームを受け、一時6万5000ドル台を回復した後、6万4499ドル近辺で推移した。
しかし、タカ派的なFRB会合以降、6万7000ドルから下落している。原油安はリスク選好の追い風となるが、高金利の長期化は逆風である。
この緩和ムードは一時的にとどまる可能性がある。ライセンスは8月21日に期限を迎え、合意に失敗すれば戦争リスクが迅速に再燃する見通し。
実質輸出量やOPECプラスの決定により、現状の持続性が明らかになる。現時点では原油安がマクロ環境を和らげているが、FRBは緩和していない。


