イラン議会は、米国のドナルド・トランプ大統領、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、米中央軍(CENTCOM)のブラッド・クーパー司令官を殺害した者に、国が5000万ユーロ(約5800万ドル)を支払うことを義務付ける法案を審議している。
議員のエブラヒム・アジジ氏がイラン国営テレビでこの提案を発表し、2月28日に前最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ氏が殺害された攻撃への報復と位置付けた。法案の名称は「イスラム共和国の軍および安全保障機関による対抗措置」。
アジジ氏は議会の国家安全保障・外交政策委員会の委員長を務める。同氏は国営テレビで、名指しされた関係者について「対抗措置の対象となるべきだ」と述べ、「いかなるムスリムや自由な人々にとっても宗教上の義務である」と語った。
議員のマフムード・ナバビアン氏も法案が採決に向かうことを認め、新たな最高指導者モジュタバ・ハメネイ氏が次に標的となった場合は「壊滅的な」対応があると警告した。
この提案はまだ委員会の審査を通過していない。成立したとしても、施行には監督者評議会の承認が必要となる。
イランは世界有数の厳しい制裁下にある経済としても知られ、国の後ろ盾によるこの規模の報奨金が、実際にどのように支払われるかが問われている。
テヘランはこれまでも、ドルシステム外での価値移転手段として、暗号資産を含む代替決済ルートを活用してきた。
専門家によれば、政権の「黙認」の下で活動する「ブラッド・カバナント」というグループは、昨年6月のイラン核関連施設への米国攻撃後、トランプ氏暗殺に対する懸賞金として4000万ドル超を集めたとされる。
この資金調達の詳細な仕組みは明らかにされていない。
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今後、実際に国家主導の懸賞金支払いに暗号資産が使われるかは不透明だ。法案には支払い方法の明記はないが、イラン政府が制裁対象の貿易でステーブルコインを利用した実例があることから、その可能性も残されている。
イスラエルの国際テロ対策研究所の研究員ダニエル・コーエン氏は、エルサレム・ポストに対し、この法案は作戦計画というよりも宣伝活動に近いとの見方を示した。
同氏は、この動きがテヘラン指導部を弱体化させた2月の攻撃後、対抗姿勢を示す「心理戦」にあたると説明する。
コーエン氏は、たとえ実際の支払い体制が機能しなくとも、公然と国家が後押しする言動が「単独犯」を刺激する恐れがあると警告した。
トランプ氏も同様に、テヘランの発言に応酬。2026年1月のインタビューで、自身に対するイランの攻撃があれば「全面的に報復する引き金となる」と警告した。
米司法省は2024年、革命防衛隊の暗殺計画に関連しイラン国籍の人物を訴追。国防長官のピート・ヘグセス氏は3月、別の暗殺計画を策定していたイラン当局者が米軍の空爆で死亡したと明かした。
この法案が議会を通過するかどうかは、これまで聖職者の言及や非公式の資金調達にとどまっていた脅迫行為を、イラン体制がどこまで制度化する意思があるかを示すことになる。
次回の委員会審議が注目点となる。
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